(福祉)介護職員等処遇改善加算とは
介護職員等処遇改善加算(障害サービスは福祉・介護職員等処遇改善加算)は介護職員等の賃金改善を目的として、介護職員等のキャリアアップや職場環境の改善に取り組む事業所に対して支給される加算です。令和6年6月より、従来3種類あった処遇改善に係る加算(処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算)が一本化されています。
令和6年5月までの旧処遇改善加算からの変更点として
- 令和6年度6月からの処遇改善加算(Ⅰ~Ⅳ)においては、加算による賃金改善の職種間配分ルールが統一されます。
- (福祉)介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員に重点的に配分することとしますが、事業所内での柔軟な配分が認められます。
加算区分と求められる取組
求められる取組 | 処遇改善加算Ⅰ | 処遇改善加算Ⅱ | 処遇改善加算Ⅲ | 処遇改善加算Ⅳ |
職位、職責等に応じた任用要件・賃金体系の整備(キャリアパス要件Ⅰ) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
資質向上の為の研修機会の提供等(キャリアパス要件Ⅱ) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
昇給の仕組み(資格や勤続年数等)の整備(キャリアパス要件Ⅲ) | 〇 | 〇 | 〇 | |
改善後の賃金年額440万以上を1人以上設定 (キャリアパス要件Ⅳ) | 〇 | 〇 | ||
経験・技能のある介護職員の配置(キャリアパス要件Ⅴ) | 〇 | |||
加算Ⅳ相当額の1/2以上を毎月の賃金にて支給(月額賃金改善要件) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
職場環境の改善 6区分28項目から選定(職場環境要件) | ◎ | ◎ | 〇 | 〇 |
キャリアパス要件について
キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系) ※加算Ⅰ~Ⅳで必須 | (福祉)介護職員について、職位、職責、職務内容等に応じた任用等の要件を定め、それらに応じた賃金体系を整備する。 |
キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等) ※加算Ⅰ~Ⅳで必須 | (福祉)介護職員の資質向上の目標や具体的な計画(以下のいずれか取組)を策定し、当該計画に係る研修の実施又は研修の機会を確保する。 ①研修機会の提供又は技術指導等の実施、介護職員の能力 評価 ②資格取得のための支援(勤務シフトの調整、休暇の付 与、費用の援助等) |
キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組み) ※加算Ⅰ~Ⅲで必須 | (福祉)介護職員について、以下のいずれかの仕組みを整備する。 ①経験に応じて昇給する仕組み ②資格に応じて昇給する仕組み ③一定基準に基づき定期に昇給を判断する仕組み |
キャリアパス要件Ⅳ(改善後の賃金額) ※加算Ⅰ・Ⅱで必須 | 経験・技能のある介護職員のうち1人以上は、賃金改善後の賃金額が年額440万円以上であること。 ※小規模事業所等で加算額全体が少額である場合などは適応免除 |
キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置) | サービス類型ごとに一定割合以上の介護福祉士等を配置していること。 具体的には、特定事業所加算、サービス提供体制強化加算、福祉職員配置等加算などの算定必要 |
※キャリアパス要件Ⅰ~Ⅲについては、根拠規定を書面で整備(就業規則、賃金規程等)の上、全ての(福祉)介護職員
に周知が必要
月額賃金改善要件について
加算Ⅳ相当の加算額の2分の1以上の金額については、月額(基本給又は毎月決まって支払われる手当)の改善に充てる。
※加算Ⅰ~Ⅳで必須
職場環境要件について
加算Ⅰ・Ⅱ 下記の6区分ごとにそれぞれ2つ以上(生産性向上は3つ以上、うち⑱は必須)取組を行う。
加算Ⅲ・Ⅳ 下記の6区分ごとにそれぞれ1つ以上(生産性向上は2つ以上)取組を行う。
(1)入職促進に向けた取り組み
① 法人や事業所の経営理念や支援方針・人材育成方針、その実現のための施策・仕組みなどの明確化 |
② 事業者の共同による採用・人事ローテーション・研修のための制度構築 |
③ 他産業からの転職者、主婦層、中高年齢者等、経験者・有資格者にこだわらない幅広い採用の仕組みの構築(採用の実績でも可) |
④ 職業体験の受入れや地域行事への参加や主催等による職業魅力向上の取組の実施 |
(2)資質の向上やキャリアアップ に向けた支援
⑤ 働きながら国家資格等の取得を目指す者に対する研修受講支援や、より専門性の高い支援技術を取得しようとする者に対する各国家資格の生涯研修制度、サービス管理責任 者研修、喀痰吸引研修、強度行動障害支援者養成研修等の業務関連専門技術研修の受講支援等 |
⑥ 研修の受講やキャリア段位制度等と人事考課との連動によるキャリアサポート制度等の導入 |
⑦ エルダー・メンター(仕事やメンタル面のサポート等をする担当者)制度等導入 |
⑧ 上位者・担当者等によるキャリア面談など、キャリアアップ・働き方等に関する定期的な相談の機会の確保 |
(3)両立支援・多様な働き方の推進
⑨ 子育てや家族等の介護等と仕事の両立を目指すための休業制度等の充実、事業所内託児施設の整備 |
⑩ 職員の事情等の状況に応じた勤務シフトや短時間正規職員制度の導入、職員の希望に即した非正規職員から正規職員への転換の制度等の整備 |
⑪ 有給休暇を取得しやすい雰囲気・意識作りのため、具体的な取得目標(例えば、1週間以上の休暇を年に〇回取得、付与日数のうち〇%以上を取得)を定めた上で、取得状 況を定期的に確認し、身近な上司等からの積極的な声かけ等に取り組んでいる |
⑫ 有給休暇の取得促進のため、情報共有や複数担当制等により、業務の属人化の解消、業務配分の偏りの解消に取り組んでいる |
⑬ 障害を有する者でも働きやすい職場環境の構築や勤務シフトの配慮 |
(4)腰痛を含む心身の健康管理
⑭ 業務や福利厚生制度、メンタルヘルス等の職員相談窓口の設置等相談体制の充実 |
⑮ 短時間勤務労働者等も受診可能な健康診断・ストレスチェックや、従業者のための休憩室の設置等健康管理対策の実施 |
⑯ 福祉・介護職員の身体の負担軽減のための介護技術の修得支援やリフト等の活用、職員に対する腰痛対策の研修、管理者に対する雇用管理改善の研修等の実施 |
⑰ 事故・トラブルへの対応マニュアル等の作成等の体制の整備 |
(5)生産性向上(業務改善及び働 く環境改善)のための業務改 善の取組
⑱ 現場の課題の見える化(課題の抽出、課題の構造化、業務時間調査の実施等)を実施している |
⑲ 5S活動(業務管理の手法の1つ。整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字をとったもの)等の実践による職場環境の整備を行っている |
⑳ 業務手順書の作成や、記録・報告様式の工夫等による情報共有や作業負担の軽減を行っている |
㉑ 業務支援ソフト(記録、情報共有、請求業務転記が不要なもの。)、情報端末(タブレット端末、スマートフォン端末等)の導入 |
㉒ 介護ロボット(見守り支援、移乗支援、移動支援、排泄支援、入浴支援、介護業務支援等)又はインカム等の職員間の連絡調整の迅速化に資するICT機器(ビジネス チャットツール含む)の導入 |
㉓ 業務内容の明確化と役割分担を行い、福祉・介護職員が支援に集中できる環境を整備。特に、間接業務(食事等の準備や片付け、清掃、ベッドメイク、ゴミ捨て等)がある 場合は、いわゆる介護助手等の活用や外注等で担うなど、役割の見直しやシフトの組み換え等を行う |
㉔ 各種委員会の共同設置、各種指針・計画の共同策定、物品の共同購入等の事務処理部門の集約、共同で行うICTインフラの整備、人事管理システムや福利厚生システム等 の共通化等、協働化を通じた職場環境の改善に向けた取組の実施 |
(6)やりがい・働きがいの構成
㉕ ミーティング等による職場内コミュニケーションの円滑化による個々の福祉・介護職員の気づきを踏まえた勤務環境や支援内容の改善 |
㉖ 地域社会への参加・包容(インクルージョン)の推進のための、モチベーション向上に資する、地域の児童・生徒や住民との交流の実施 |
㉗ 利用者本位の支援方針など障害福祉や法人の理念等を定期的に学ぶ機会の提供 |
㉘ 支援の好事例や、利用者やその家族からの謝意等の情報を共有する機会の提供 |
処遇改善加算における賃金改善の対象者
介護職務等に従事する介護職員(福祉職員)への支給を原則として、特に経験・技能のある職員に重点的に配分することとされているが、事業所内での柔軟な職種間配分が認められています。
※令和5年度以前の旧体系の処遇改善加算(処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ加算)では、処遇改善加算は看護師やサービス管理責任者(障害サービス)等の賃金化善には充てられない等のルールがありましたが、令和6年度以降については「介護(福祉)職員への賃金改善に充てる」という原則をしっかりと理解した上で、その他の職員への支給も認められるようになっています。ただし、運営法人の役員は原則として賃金改善の対象者とはなりません。
処遇改善加算の仕組みと賃金改善の実施について
〇処遇改善加算等の仕組み
処遇改善加算等は、サービス別の基本サービス費に各種加算減算(処遇改善加算等を除く)を加えた1月当たりの総単位数にサービス別の加算率を乗じた単位数を算定します。
〇賃金改善の実施について
➀ 処遇改善加算の算定額に相当する職員の賃金(基本給、手当、賞与等 ※退職手当を除く)の改善を実施する必要があります。
② 賃金改善は、基本給、手当、賞与等のうちから対象とする賃金項目を特定した上で行う必要があります。
③ 原則として、特定した賃金項目を含め、賃金水準を低下させてはなりません。
④ 処遇改善加算の算定に必要な各基準(キャリアパス要件、職場環境要件の取組等)を達成に向けての取組費用は、賃金改善実施に要する費用には含まれません。
〇算定の手続き
処遇改善加算の算定には、処遇改善加算計画書の届出が必要です。
主なサービスの加算率(令和6年度)
〇介護保険サービス
サービス区分 | 加算Ⅰ | 加算Ⅱ | 加算Ⅲ | 加算Ⅳ |
訪問介護 | 24.5% | 22.4% | 18.2% | 14.5% |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 24.5% | 22.4% | 18.2% | 14.5% |
(介護予防)訪問入浴介護 | 10.0% | 9.4% | 7.9% | 6.3% |
通所介護 | 9.2% | 9.0% | 8.0% | 6.4% |
地域密着型通所介護 | 9.2% | 9.0% | 8.0% | 6.4% |
(介護予防)小規模多機能型居宅介護 | 14.9% | 14.6% | 13.4% | 10.6% |
看護小規模多機能型居宅介護 | 14.9% | 14.6% | 13.4% | 10.6% |
〇障がい福祉サービス
サービス区分 | 加算Ⅰ | 加算Ⅱ | 加算Ⅲ | 加算Ⅳ |
居宅介護 | 41.7% | 40.2% | 34.7% | 27.3% |
重度訪問介護 | 34.3% | 32.8% | 27.3% | 21.9% |
同行援護 | 41.7% | 40.2% | 34.7% | 27.3% |
行動援護 | 38.2% | 36.7% | 31.2% | 24.8% |
生活介護 | 8.1% | 8.0% | 6.7% | 5.5% |
就労移行支援 | 10.3% | 10.1% | 8.6% | 6.9% |
就労継続支援A型 | 9.6% | 9.4% | 7.9% | 6.3% |
就労継続支援B型 | 9.6% | 9.4% | 7.9% | 6.3% |
共同生活援助(介護サービス包括型) | 14.7% | 14.4% | 12.8% | 10.5% |
児童発達支援 | 13.1% | 12.8% | 11.8% | 9.6% |
放課後等デイサービス | 13.4% | 13.1% | 12.1% | 9.8% |