助成金とは・補助金とは
「助成金」や「補助金」なんとなく「国や団体からお金がもらえる制度・・・」という認識はお持ちかと思いますが、具体的に違いをご存じでしょうか?一般的に助成金は、主として厚生労働省が管轄している雇用関係の助成制度です。一方、補助金は経済産業省や各自治体などが、中小企業の技術開発や生産性の向上、経営の多角化や事業継続、IT化、新規事業の立ち上げ等に対して支援を行う制度です。
助成金は雇用関係を中心に、特定の政策目標の達成のために幅広く支給され、その使途は比較的柔軟です。一方、補助金は一定の事業の費用の一部を補助する目的で支給されるので、使途が明確に定められています。
助成金を受給するためには
助成金・補助金を受給するためには、それぞれ必要な要件を満たす必要があります。特に雇用保険関係の助成金の受給には、「適正な労務管理」を行っていることが求められます。適正な労務管理とは、下記のような取組をきちんと行っていることを言います。
- 賃金台帳や出勤簿などの法定帳簿をきちんと整備している
- 残業代の未払いがない、割増賃金を適切に計算して支払っている
- 社会保険等の加入漏れがない
また、下記に該当する事業者は受給できません。
- 支給申請した年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない事業主
- 支給申請日の前日から過去1年以内に、労働関係法令の違反を行った事業主
- 性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業またはこれらの営業の一部を受託する営業を行う事業主
- 暴力団と関わりのある事業主
- 暴力主義的破壊活動を行った、または行う恐れがある団体等に属している事業主
- 支給申請日、又は支給決定日の時点で倒産している事業主
- 支給申請時、又は支給決定時に、雇用保険適用事業所の事業主でない事業主
※雇用保険被保険者数が0人の場合や、事業所が廃止されている場合等
主な助成金
◇ キャリアアップ助成金(正社員化コース)
有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化する取組を実施した事業主に対して助成する制度です。
●支給額 (申請者が中小企業の場合)
正社員化前雇用形態 ▶ | 有期雇用労働者※1 | 無期雇用労働者 |
重点支援対象者※2 | 80万円(40万円×2期) | 40万円(20万円×2期) |
上記以外 | 40万円(40万円×1期) | 20万円(20万円×1期) |
※1 雇用された期間が通算5年を超える有期雇用労働者については無期雇用労働者とみなされます。
※2 重点支援対象者とは下記の労働者を指します
① 雇入れから3年以上の有期雇用労働者
② 雇入れから3年未満で、次のa,bいずれにも該当する有期雇用労働者
a:過去5年間に正規雇用労働者であった期間が合計1年以下
b:過去1年間に正規雇用労働者として雇用されていない
③ 派遣労働者、母子家庭の母等、人材開発支援助成金の特定の訓練修了者
● キャリアアップ助成金申請の流れ
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◇ 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
高齢者や障害者等の就職困難者をハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者(雇用保険の一般被保険者)として雇い入れる事業主に対して助成されます。
● 支給額(中小企業事業主の場合)
対象労働者 | 支給額 | 助成対象期間 | 支給対象期ごとの支給額 | |
短時間労働者以外 | 高年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等 | 60万円 | 1年 | 30万円×2期 |
短時間労働者以外 | 重度障害者等以外の身体・知的障害者 | 120万円 | 2年 | 30万円×4期 |
短時間労働者以外 | 重度障害者等(※2) | 240万円 | 3年 | 40万円×6期 |
短時間労働者(※1) | 高年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等 | 40万円 | 1年 | 20万円×2期 |
短時間労働者 | 重度障害者等を含む身体・知的障害者 | 80万円 | 2年 | 20万円×4期 |
※1 短時間労働者とは、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満である者をいいます。
※2 重度障害者等とは、重度の身体・知的障害者、45歳以上の身体・知的障害者及び精神障害者をいいます。
●主な支給要件
① ハローワーク又は民間の職業紹介事業者等(※1)の紹介により雇入れること
② 雇用保険一般府保険者又は高年齢被保険者として雇入れ、継続して雇用すること(※2)
※1 ①公共職業安定所 ②地方運輸局(船員として雇入れる場合) ③適正な運用を期すことのできる有料・無料
職業紹介事業者(特定地方公共団体、厚生労働大臣の許可を受けた有料・無料職業紹介事業者、届出を行った
無料職業紹介事業者等のうち、本助成金に係る取扱いを行うに当たり、厚生労働省職業安定局長の定める項目
のいずれにも同意する旨の届出を労働局長に提出している職業紹介事業者
※2 対象労働者の年齢が65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつ、当該雇用期間が継続して2年以上であること
● 特定障害者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)申請の流れ
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助成金等の不正受給にお気をつけください。
助成金の不正受給を行った場合、助成金の返還、違約金(不正受給額の2割相当 等)の支払いや、不正受給決定日から5年間助成金の受給ができない(雇用関係の助成金の場合)といった罰則だけでなく、不正に受給した企業(事業主)は公表されるため、これまで培ってきた社会的信用を失うことになります。意図的に不正受給を受けることは問題外の行為ですが、そのつもりが無くても結果的に不正受給となっていたというケースも散見されます。厚生労働省が公開してる事例(キャリアアップ助成金の例)として次のような事例が紹介されています。
- 申請手続きを行った代理人が事業主に知らせることなく、支給要件に合致するように就業規則を書き換えて申請していた。
- 人事労務管理担当者の従業員に全て任せていたところ、代理人と結託し、当初から正社員として雇っていた従業員について、有期雇用労働者として雇ったとする偽の雇用契約書を作成し申請した。
最近では、様々な事業者が助成金・補助金の申請手続きについてアドバイスするという名目で、事業主様にアプローチしています。助成金・補助金の受給をお考えの場合は、「手続きを丸投げ」したり、「こうしておけば大丈夫です」といった言葉に惑わされないよう、注意が必要です。
※当事務所では、助成金・補助金の申請手続きについては、その内容をまず分かり易く・詳細に説明させていただき、要件等十分にご理解・ご納得を頂いてから業務着手することを心がけております。